4.1. DSQSS/DLA のシンプルモード

シンプルモードは DSQSS/DLA において最も簡便な計算モードです. シンプルモードでは, DSQSS/DLA であらかじめ定義されている模型, 格子による計算を, ひとつの入力ファイル(シンプルモードファイル)から行うことができます. 図 4.1 はシンプルモードによる計算の流れ図です.

DSQSS/DLA のシンプルモード.

図 4.1 DSQSS/DLA のシンプルモード. 丸囲みがファイルを, 四角囲みがツールを表す.

4.1.1. シンプルモードファイル

シンプルモードファイルは TOML 形式のテキストファイルです. dla_predla_hamgen などのツールの入力ファイルとして使います.

4.1.1.1. parameter

逆温度やモンテカルロステップ数などの計算条件を指定するテーブルです. dla_pre で使用されます.

parameter テーブルに属するキーのリストと意味を次に示します.

パラメータ名

デフォルト値

説明

beta

double

--

逆温度.

npre

int

1000

モンテカルロスイープ中のワーム対生成回数を求める事前計算のためのモンテカルロ試行回数.

ntherm

int

1000

熱平衡化のためのモンテカルロスイープ数.

ndecor

int

1000

セット間の自己相関を取り除くためのモンテカルロスイープ数.

nmcs

int

1000

物理量計算のためのモンテカルロスイープ数.

nset

int

10

モンテカルロ計算の繰り返し数.

simulationtime

int

0.0

計算時間(単位は秒).

seed

int

198212240

疑似乱数の種.

nvermax

int

10000

最大バーテックス数.

nsegmax

int

10000

最大セグメント数.

algfile

int

algorithm.xml

アルゴリズム定義ファイル名.

latfile

string

lattice.xml

格子定義ファイル名.

ntau

int

10

虚時間構造因子などの計算で使われる虚時間方向の離散化数.

wvfile

string

--

波数ベクトルXMLファイル名. 空文字列の場合, 構造因子は計算されない.

dispfile

string

--

相対座標XMLファイル名. 空文字列の場合, 実空間表示温度グリーン関数は計算されない.

outfile

string

sample.log

メイン出力ファイル名.

sfoutfile

string

sf.dat

構造因子出力ファイル名.

cfoutfile

string

cf.dat

実空間表示温度グリーン関数出力ファイル名.

ckoutfile

string

ck.dat

波数空間表示温度グリーン関数出力ファイル名.

  • simulationtime について

    • simulationtime > 0.0 のとき

      • 指定秒数が経過するか, 計算が完了したとき, 途中経過をチェックポイントファイルに書き出した後, プログラムを終了します.

      • 計算開始時にチェックポイントファイルがある場合, そのファイルを読み込んだ後に計算を再開します.

      • チェックポイントファイルの名前は outfile で指定されるメイン出力ファイル名の末尾に .cjob をつけたものです.

    • simulationtime <= 0.0 のとき

      • チェックポイントファイルは無視され, 書き出しも読み込みも行われません.

4.1.1.2. lattice

格子の情報を指定するテーブルです. dla_pre, dla_latgen で使用されます.

lattice テーブルに属するキーのリストと意味を次に示します.

パラメータ名

デフォルト値

説明

lattice

string

--

格子の種類.

dim

int

--

空間次元.

L

list(int) or int

--

格子の大きさ. 整数の配列か整数で指定します. 空間次元より要素が少ない場合, 足りない要素は最後の要素で自動的に埋められます.

bc

list(bool) or bool

true

各次元に対する, 格子の境界条件. ブール値の配列かブール値で指定します. true が周期的境界条件を, false が開境界条件を示します.

現在利用可能な格子は次のとおりです.

hypercubic

d次元超立方格子.

triangular

2次元三角格子.

honeycomb

2次元蜂の巣格子.

kagome

2次元カゴメ格子.

4.1.1.3. hamiltonian

ハミルトニアンの情報を指定するテーブルです. dla_pre, dla_hamgen で使用されます.

hamiltonian テーブルに属するキーのリストと意味を次に示します.

パラメータ名

デフォルト値

説明

model

string

--

模型の種類. XXZ 模型 `spin' とボーズハバード模型 `boson' が利用可能です.

M

int

1

サイトあたりの取りうる状態数-1. XXZ 模型では局所スピンの大きさ \(2S\) を, ボーズハバード模型では粒子数カットオフを指定します.

XXZ 模型

\[\mathcal{H} = \sum_{\langle i, j \rangle} -J_z S_i^z S_j^z -\frac{J_{xy}}{2} \left( S_i^+ S_j^- + S_i^- S_j^+ \right) + D \sum_i \left(S_i^z\right)^2 - h \sum_i S_i^z\]

に特有のパラメータは次の通り.

パラメータ名

デフォルト値

説明

Jz

list(float) or float

0.0

交換相互作用. 相互作用の種類が複数ある場合は, 配列で指定する. 正が強磁性的相互作用を, 負が反強磁性的相互作用を意味する.

Jxy

list(float) or float

0.0

交換相互作用. 相互作用の種類が複数ある場合は, 配列で指定する. 正が強磁性的相互作用を, 負が反強磁性的相互作用を意味する.

D

list(float) or float

0.0

オンサイトのスピン異方性パラメータ. サイトの種類が複数ある場合は, 配列で指定する.

h

list(float) or float

0.0

磁場. サイトの種類が複数ある場合は, 配列で指定する.

ボーズハバード 模型

\[\mathcal{H} = \sum_{\langle i, j \rangle} \left[ -t b_i^\dagger b_j + h.c. + V n_i n_j \right] + \sum_i \left[ \frac{U}{2} n_i(n_i-1) - \mu n_i \right]\]

に特有のパラメータは次の通り.

パラメータ名

デフォルト値

説明

t

list(float) or float

0.0

ホッピングパラメータ. 相互作用の種類が複数ある場合は, 配列で指定する.

V

list(float) or float

0.0

オフサイトの粒子間相互作用. 相互作用の種類が複数ある場合は, 配列で指定する. 正が斥力ポテンシャル, 負が引力ポテンシャルを意味する.

U

list(float) or float

0.0

オンサイトの粒子間相互作用. サイトの種類が複数ある場合は, 配列で指定する. 正が斥力ポテンシャル, 負が引力ポテンシャルを意味する.

mu

list(float) or float

0.0

化学ポテンシャル. サイトの種類が複数ある場合は, 配列で指定する.

4.1.1.4. kpoints

波数の情報を指定するテーブルです. dla_pre および dla_wvgen で使用されます.

パラメータ名

デフォルト値

説明

ksteps

list(int) or int

0

波数の増分. 0 の場合, 格子サイズの半分が設定される.

たとえば ksteps = [1,2] で格子のサイズが L = [4,4] のとき, 波数点 \(\vec{k} = k_x \vec{g}_y + k_y \vec{g}_y\) として \((k_x,k_y) = (0,0), (1,0), (2,0), (0,2), (1,2), (2,2)\) が生成されます. ここで \(\vec{g}\) は基本逆格子ベクトルです.

4.1.1.5. algorithm

ワームの散乱確率の計算アルゴリズムなどを指定するテーブルです. dla_pre で使用されます.

パラメータ名

デフォルト値

説明

kernel

string

'suwa todo'

バーテックスにおけるワームの散乱過程について, その遷移確率を計算するために用いる手法.

kernel として指定できる手法は次の通り.

suwa todo

詳細釣り合いを破る諏訪・藤堂アルゴリズム (H. Suwa and S. Todo, PRL 105, 120603 (2010).)

reversible suwa todo

詳細釣り合いを満たす諏訪・藤堂アルゴリズム (H. Suwa and S. Todo, arXiv:1106.3562.)

heat bath

熱浴法.

metropolis

メトロポリスアルゴリズム.